こんばんは、布団のなかからそのひぐらし商会のRIKOです。4月に入ってからだんだんと己のペース?新しいお薬が効いてきたのか、毎日少しずつ活動することができています! でも相変わらず布団のなかにいることが多いです。
今回は私が最近いちばん楽しくて、最高ぅ!な気持ちになった数日の話をしたいと思います。たまには私が暗くない話をしてもいいかな、あれ? 前回しょーーーもないエッセイを見せたような……気を取り直して今回は「服」の話です。気楽にお読みください~。
自由はまだまだ広かった
このあいだある本を読んだ。それはスタイルブックだったが、ノンバイナリーの著者が書いたスタイルブックだ*。それを読んだ私は、ひきこもりということもあり比較的好きに服を着て、己の外見を自由にしていると思っていたが、その自由は全然自由でないことに衝撃を受けた。
私は基本的にパンツスタイルだ。古着で少年っぽい服を選ぶことが多い。髪型もショートカットで、無一文だからカラーを入れるのはたまにだが、赤かピンクにする。しかし実はロリィタ服も好きで、家族の手前あまり着ることはないが(世間の目はいつも服に対して寛容とは限らない)、普段着としてロリィタ服を持っている。
14しかしスカートは足がスースーして落ち着かないためあまり履いていないし、明るい色もクローゼットを見たら意外となかった。派手な服も好きなのに。自分はいつの間にか服を買うときに無意識に年齢を気にしていたのではないかと気づいた。今年32歳になる私は、落ち着いた色に着地しようとしていたのだ。まだ人生の若手なのに!
スタイルブックを読んで「私まだ自由に服が着られる!」「もっと素敵に己を飾り立てることだってできるじゃん!」「わお、最高、私がこれ以上素晴らしくなれるってこと?」と大興奮だ。そこからは毎日のように好きな古着屋さんのウェブストアを見漁ったり、インスタを見たりした。これもこれも素敵だなあといつもは敬遠していたドレス系やスカートも見た。ピアスも検索したりアクセサリー系のアンテナもぴよーんと伸びた。そんなウェブ徘徊を数日していたところ、我慢できなくなってきた。実際に服を見たい、着たいという欲が出てきたのだ。
そこに好きな古着屋の移転後オープンのお知らせ。は! ここだ! この古着屋であれば自由にもっと素敵な自分を構成する服やらなんやらがあるに違いない。行かなくては! と思った。母に頼み、行きだけ送ってもらいその古着屋に到着。
実際に目の前にある服を丁寧に見て「ああこのデザイン素敵だな」と思う。癒される。こうでなくては……ともう満足感が出はじめた。スカートのコーナーでかわいい柄のスカートを見つける。そしてなんていう名称かは分からないが(トラックジャケット?)、真っピンクでかわいいのがあった。いざ、と試着をさせてもらう。スカートの下にパンツを重ねてもいいんだとスタイルブックを見て学んだ私はスカートも自由に履くことができるようになったし、鏡を見たとき「超似合ってる!」と思った。ピンクのトラックジャケットは似合っていない?と不安になり、店主さんに聞いてみる。「他人から見るとめっちゃ似合ってますよ」と背中を押され、じゃあこれだね!と買うことにした。
私はピアス以外あまりアクセサリーをつけないのだが、ビーズリングのなかに強そうでかっこいいリングがあったためそれも買うことにした。すべてが最高だーーー!と思いながら買い、満足がハイパー満足に変わった。自由を感じる。ピンクは着たことがないし、スカートとの新しい関係も築けた。店主さんは服を性別で分ける感覚がないそうで、人も性別で分ける感覚がないらしい。とても素敵だ。やはりこのパッションをぶつけるのにここに来ることが正解だったのだとルンルンになった。
いつもであればこの後すぐにバスへ乗り家直帰なところを、スキップしたくなって歩いてみた。写真を撮りながら家に向かって歩く。ただそれだけなのに楽しくて仕方なかった。ふと反対の道に「時代は変わる」と書かれた看板を見つけ、今の私やんけ!と思い入店した。
店主さんは壮年の男性で、暇つぶしでお店をやっているそうだ。万物、あらゆるものが店内に所狭しと置いてあった。「最高だーーー!」と思う。途中から見ているのが楽しくて、店主さんに荷物を置かせてもらって丁寧に点検するように店内を物色した。たまに店主さんの解説付き。そこもおもしろくてたくさんの品物を見た。値段がついてないものに「いくらですか」と聞くと「こんなのどこにあったの?」と聞かれ、ここですと指すと「ああここね、100円でいいよ」と言われた。発掘作業に似ていて面白くなってしまう。店主さんは「こういう細かいものはね、見てるのが楽しいんだよ、買わなくてもいいんだよ」と言っていた。おもしれー人間。儲けはなくてもいいそうだ。「また夏物出すからね、そのときまた来な」と言われた。本当に万物があり、ソールが全剥がれした靴も、訳ありすぎるパンツも、怖すぎるポカリもあった。いい店に出会ってしまったとまた興奮する。無一文に優しいお店。訳ありパンツを買って「みとちゃん(水戸市のゆるキャラで藁納豆の顔面をしている)」の袋に買ったものを入れてくれたところも最高だった。こうでなきゃみたいな高揚感があった。「また来ますね」と店主さんに約束して店を出ると、一気に疲労が出て大人しくバスに乗った。
でもこれはいい日の疲れだなと歩いていると、これまた好きな古着屋の店主さんに遭遇した。野生の店主さん。少しお話をして帰ったが、好きな人たちに会えてハイパーミラクルエベレスト最高になったなと思った。
帰ると犬が大歓迎で迎えてくれ、顔がよだれまみれになる。でも私は最高な服や外見を飾ることへの精神を手に入れ上機嫌だったし、実際に最高の服や人との出会いがあって無敵状態だったため犬を受け入れた。
諸君らは、ジェンダーやルッキズム(外見至上主義)やエイジズム(年齢による差別)に怯えて、好きな服がメイクがアクセサリーが選べないという状況にいないだろうか。いないなら幸いだが、もしそういう状況にいるのであれば気にすることはない。自由にぼんぼん着飾っていこう。私は自由に服を着て、己を飾り始め、母から変なコメントをよくもらうようになったが一切無視している! 一緒に自由に己を楽しんでいこう!
*山内尚『ノンバイナリースタイルブック』(柏書房)
今回文章にパッションが乗りすぎて読者が引いていないか心配しています。でも、この服の話はいろんなことに応用できるのではないかと思っています。こんなことしたらおかしいと思われるかなと躊躇っている趣味などもそうかなと。自分で足かせをはめていることはありませんか? 私はいま服や飾ることに関して、ものっそい自由を感じています。適当に服を着る日も、前より肯定的になりました。いつも全力投球はできないけど、登板するときは160kmのストレートを投げていきたいと思います。と言ったところでよれよれのスウェット上下で布団に入ります、おやすみなさい(布団IN)。
RIKO そのひぐらし商会
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