新刊チェック(24/01/14-24/01/20)&お知らせ
あっというまの1年でした。社会的に最悪を更新し続けるような1年だったので、来年はもろもろ取り戻していきたいですね。とにかく私は長生きしたい。
新刊チェック(24/01/14-24/01/20に刊行予定の本) *入荷は少し遅れます
ステュディオ・パラボリカ
人形歌集 羽あるいは骨
9784902916508
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784902916508
”川野芽生が人形を詠む 人形作家・中川多理との希代稀なコラボレーション”ということで、年末年始は川野さんの新刊がたくさん出ますね。エッセイ『かわいいピンクの竜になる』、小説『Blue』(1/17発売予定)、歌集。
文藝春秋
ぼくは青くて透明で
9784163917931
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784163917931
窪美澄、新作。マイノリティを描く物語が増えてきていてよろこばしいけども、それが一方的な消費にならないように気をつけなくちゃいけない側面も忘れてはならないわけで、本屋としては売り方や届け方について丁寧に考えて実践していかないといけないな、とあらためて。本書がどうとかそういうことではなく。
講談社
旅する練習
9784065338438
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784065338438
文庫。乗代雄介。ここ最近ずっと芥川賞候補にノミネートされ続けていたから、これが何年前の作品なのかがパッとわからない……もう芥川賞以外ぜんぶとる人になってほしい。
新潮社
東京都同情塔
9784103555117
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784103555117
今回の芥川賞候補作。”ゆるふわな言葉と実のない正義の関係を豊かなフロウで暴く、生成AI時代の預言の書”。正直なところ、冷笑主義な方向に行かないことを願いたくなる煽り文句ではある……。既読の方は情報提供をば……。版元のワードチョイスが「ウケ狙い」に走るのは仕方のないことなのだけど、やはり丁寧さというかなんというかはほしいところ。
春風社
帰属の美学
9784861109072
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784861109072
”あなたは作品だけを見てその価値を判断できますか?異国の食べ物はどのようにエキゾチックなのか。そのファッションはどうして革新的なのか。文化的盗用はなぜ問題となるのか。ある対象をその文脈をふまえながら美的に判断する際のメカニズムについて、芸術作品を含むさまざまな文化現象を例とし考察する”。高いし絶対に難しいから読みこなせる気がしないけど、非常に気になってしまう1冊。装丁の力だろうか。副題「板前の国籍は寿司の味を変えるか」の配置もいい。これ自体が「美」の評価についてのフックになっている気がする。
集英社
Blue
9784087718669
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784087718669
ということで、川野さんの新刊をあらためて。”社会的規範によって揺さぶられる若きたましいを痛切に映しだす、いま最も読みたいトランスジェンダーの物語”。芥川賞がどうとか関係なく多めに仕入れるので、雑誌「すばる」をゲットし損ねた方はぜひこのタイミングでどうぞ。
ナカニシヤ出版
災害の環境史
9784779517754
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784779517754
大事な論点なので長めに引用を2点。”本書で考えたいのは、そもそも「災害」とは私たちにとって何なのかということです。「災害」というと、荒ぶる自然が人間に与える甚大な被害というイメージがあると思います。たしかにかつての自然災害は、そのようなものでした。しかし科学技術が高度に発達した現代社会においては、災害は人間の世界の内部に組み込まれています。そのような現代の災害から、人間と自然の関係について考え、さらには人間のあり方について考えることが、本講義の目的です。””本書の視点は、コロナ禍が落ち着いてきた現在でも通用するものであると考えています。本書のおもな論点は、「科学技術社会」は次々と新たな災害をもたらす一方で、災害を日常のなかに埋め込んでいく機構を持っているということです。(中略)近い将来にCOVID-19は、完全に私たちの日常のなかに組み込まれるでしょう。それでもCOVID-19について振り返ることには意味があるはずです。”個人的に言及したいのは、本筋とは少しズレるように思えるけども、本の紹介の中でもなされているように「コロナが終わった」的な雰囲気になっていることへの疑義です。『ドラキュラ・シンドローム 外国を恐怖する英国ヴィクトリア朝』を読んでいたときにあらためて思ったのですが、いわゆる世界的な流行病というのは1世紀から数世紀にわたって5年とか10年とかのスパンで断続的に流行を繰り返す、これがこれまでの歴史でのスタンダードなわけで、コロナがその例外だと考えてしまい「終わった」としてしまうのは違うと思うんですよね。科学技術が進歩したからウイルスなんて一網打尽にできる、つまり「なかった」ことにできる、なんてのはありえないわけで、本書にあるように「完全に私たちの日常のなかに組み込まれる」必要があるはずです。だからこれ重要な1冊なんじゃないかと。
集英社
「おりる」思想 無駄にしんどい世の中だから
9784087212969
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784087212969
新書。”競争に勝って生き残らなければならないと「思い込み」、しんどい思いをしている人へ、自分らしい生き方を送るために「おりる」ことを提案した一冊”。『違国日記』で笠町くんが「男社会から降りた」的なことを言っていて、でも実際には「降りる」ことはできないし降りたつもりになってしまうのも危ういよね……みたいなことを誰かが言っていたことを思い出しました。そういう意識も忘れずに読みたいところ。というか、よく見たら帯に「書店員 日野剛広」の名前があるぞ……(私信)。
百万年書房
脳のお休み
9784910053455
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784910053455
百万年書房のエッセイレーベル「暮らし」の5冊目。滝口悠生のコメントを読むと、lighthouseにあるべき本な気がする。
講談社
猿の戴冠式
9784065346952
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784065346952
”女がいますぐ剥ぎ取りたいと思っているものといえば、それは〈人間の女の皮〉にちがいなかった。女は人間の〈ふり〉をして、ガラスの向こう側にたっている”。”女とシネノは同じだった。シネノのほうはそのふるまいこそ完璧ではあったけれど、それでも猿の〈ふり〉をして、あるいは猿の〈姿をとって〉、こちら側にいる”。こちらも今回の芥川賞候補。先日の高橋くん読書会でも言及している参加者がいましたね。
今週のお知らせコーナー
①定期読書会関連のお知らせ
・1/21(日)14時〜16時 高橋くん読書会
→今回は特別編で、課題本は『孤独の本質 つながりの力』です。英治出版が企画&運営をしてくれます。詳細は画像にてチェック!参加申込はこちらからも可能です。
・1/28(日)14時〜16時 『物語とトラウマ』ゆる読書会
→今回の課題本は多和田葉子の『献灯使』です。詳細はこちらから。
②12/22(金)19時〜21時
『〈公正(フェアネス)〉を乗りこなす 正義の反対は別の正義か』(太郎次郎社エディタス)の著者・朱喜哲(ちゅ・ひちょる)さんをお招きして、当店にてトークイベントを開催しました。個人的には自分が学ぶ・考える機会をもらった感じで、ありがたい時間になりました。アーカイブもあるのでぜひ。文字起こし&編集をしたテキストアーカイブは年明け以降に作成に取り掛かります。しばしお待ちください。
③12/23(土)13:00〜14:30、wezzyさんの仕切りで開催されるオンラインイベント「『反差別』の実践/表現を考える 『われらはすでに共にある』刊行記念」に登壇しました。期せずしてwezzy最後のイベントという大役を仰せつかりました……。こちらもアーカイブあります。同様に、テキストベースでのアーカイブも順次作成予定です。
④年明けの1/7(日)におでんの会を開催。今年の年初に牟田都子さんを無駄づかいしたとき同様、来年はひらいめぐみさんと百万年書房(の北尾さん)を無駄づかいします。営業時間中、おでん鍋をぐつぐつさせながらおふたりにブース販売をしてもらい、ひたすらだらだらする1日。こちらも詳細が決まったのでお知らせ。ひらいさんによる「転職お悩み相談会」も開催されます。
⑤年末年始のお休みは、たぶん12/30(土)〜1/5(金)まで。⑥のせいで休みがあるのか不安。
⑥ウェブストアを移転します。目標は年明けから新ストアにてオープン、です。具体的にはいま使っているBASEからSTORESに移行。BASEは来年から利用料が3倍以上になるのでもともと来年中にゆるゆると移転をしようと思っていたのですが、ここに来て送料計算の仕様が使い勝手の悪いものに統一されてしまったので、移転の時期&ペースを急激にはやめました(移転作業が最優先事項になってしまったのでいろいろな業務がとまっています)。現時点での進捗率は50%です。
⑦ブルースカイのアカウントを開設していました。なお、10月いっぱいでTwitterの運用はほぼ終了しました。緊急連絡やDM利用などは続けます。あと、Twitterでしか告知ができない/していないアカウントに関わる告知なども、当面の間は続けます。通常のお知らせ系はほかSNSにて同時並行的におこないますので、ご都合よろしいものでチェックしてください。各種リンクはこちらにまとまっていますので、よーちぇけらー٩( ᐛ )و
先日の高橋くん読書会のあとの打ち上げ?的なもので、ついに『百年の孤独』が文庫化されるらしいという話題から、なぜか「来年は『トリストラム・シャンディ』を読んで読書会をするぞ!」という謎の宣言をしてしまいました。みんなで毎回「やっぱりわからないよね」「なんもわからないね」と励まし合う会になると思います。岩波書店さん、重版お願いします。ちなみに私の分はたぶん実家の本棚の奥深くに眠っているはずです。もちろん読んでいません。それではよいお年を。移転作業が終わらない。