新刊チェック(24/05/12-18)&お知らせ
クソなニュースばかりが入ってくる日々ですが、特に気になったものをピックアップしてコメントしておきます。
・マイナ保険証低迷で「通報」促す? 河野氏が自民議員に文書送付→“マイナ保険証の利用率は5%程度に低迷”しているにもかかわらず、つまり必要とされていないにもかかわらず、それを強行するわけですね。こういう政府によって戦争も、必要とされていないにもかかわらず始められてしまうのでしょうね。断固拒否。
・【書店振興プロジェクト】齋藤経産大臣 書店の意見聞く「車座ヒアリング」開催、補助金・無人書店・キャッシュレスなど話題に→先週の新刊チェックでもとある本について書きましたけど、いわゆる「おじさん(のエライヒト)」しかいない会議で現状を打破する案が出てくる可能性は低いでしょう。そもそも紙の保険証をマイナンバー保険証に強制変更するための財源を日本在住民に分配すれば、こんな「政治主導」の支援策なんて不要ですし。ただ、同時に、この記事から発せられるような「無人書店なんて……」という反応にも批判的応答をしておきます。社会状況がよくなれば有人だろうと無人だろうと書店は成立するようになるし、それでいいはずです(いろいろな形の本屋があるほうがよいのだから)。そして、この社会には無人書店のほうが(安心して)本を見れる/買える者もいるのだということは忘れてはなりません。深夜にしか本屋に行けない者、対人コミュニケーションや他者の存在自体が不得意な者……etc。こういった者らの存在を無視した「本屋は人と人が触れ合える場所でなくちゃ!」を続けているうちは、本屋の苦境は乗り越えられないと思います。なぜなら、いま本屋で本を買って読むことができなくなっているのは、社会によって抑圧されているマイノリティに顕著だからです(マイノリティは低収入になりがちだし、低収入であればあるほど衣食住にかかる「生活必需品費」の高騰の影響を受けてしまいます)。
新刊チェック(24/05/12-18に刊行予定の本) *入荷は少し遅れます
医学書院
あらゆることは今起こる
9784260056946
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784260056946
“ADHDと診断された小説家は、薬を飲むと「36年ぶりに目が覚めた」。私は私の身体しか体験できない。にしても自分の内側でいったい何が起こっているのか。「ある場所の過去と今。誰かの記憶と経験。出来事をめぐる複数からの視点。それは私の小説そのもの」と語る著者の日常生活やいかに”。まさか柴崎友香の本が医学書院のシリーズ「ケアをひらく」から出るとは……。医学書院の本は掛け率が高いのですが、まさに薄利多売の精神でガンガン届けていきたいと思います!!(突然のマッチョ)
誠文堂新光社
有賀薫のだしらぼ
9784416623695
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784416623695
“料理がもっと自由になる!昆布やかつお節だけじゃない、ポップで楽しい「だしの実験室」へようこそ!”ちなみに、おでんにトマトを入れるとうまうまになります。おでんの会の日々で得た知見。
みすず書房
パレスチナ和平交渉の歴史
9784622097068
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784622097068
“昨年10月のハマスの攻撃以来、問題の起源については多くの解説がなされた。しかし和平交渉の経緯を網羅したものは本書が初めてだろう。報道や政府文書として発表されたまま散逸している情報をまとめ上げ、文脈の解説を行った労作である。和平を目指して無数の文書や合意が交わされながら、それはいつも類似のパターンで潰えてきた。本書が示すのはその背景であり、今後あるべき交渉の輪郭である”。章立てが歴代アメリカ大統領をもとにしているので、アメリカ視点(の資料)からまとめられたものなのでしょうか。それともそうしたほうが問題点(たとえばアメリカの愚策)が明確になるからか。いずれにせよ気になる1冊。4000円+税でちょっと高い(こういう本を富裕層だけが買って読める社会になっていることがよろしくないのだということ、理解してもらえるでしょうか)。
文藝春秋
女の子たち風船爆弾をつくる
9784163918358
https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163918358
“日露戦争30周年に日本が沸いた春、その女の子たちは小学校に上がった。できたばかりの東京宝塚劇場の、華やかな少女歌劇団の公演に、彼女たちは夢中になった。彼女たちはウールのフリル付きの大きすぎるワンピースを着る、市電の走る大通りをスキップでわたる、家族でクリスマスのお祝いをする。しかし、少しずつでも確実に聞こえ始めたのは戦争の足音”。小林エリカ最新小説。“膨大な記録や取材から掬い上げた無数の「彼女たちの声」を、ポエティックな長篇に織り上げた意欲作”なんだけど、これがまた「未来」になりそうで最悪。
岩崎書店
もののけdiary
9784265831197
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784265831197
“どうしても怖がらせたい魔王vs.まったく気にしない少年の、30日間の不気味でヘンテコな交流録。江戸中期に誕生した物語、「稲生物怪録(いのうもののけろく)」”が、“京極夏彦と石黒亜矢子の共演で絵本に”なった……。これも辞書みたいな厚さなのだろうかと不安になったけど、88ページとあるのでたぶん大丈夫です(紙厚が5ミリとかの台紙で造本されている可能性は0ではない)。
西村書店
もし、世界にわたしがいなかったら
9784867060490
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784867060490
“本書はなぞときのようにストーリーが展開し、「わたし」がなにものであるかは、最後に明かされます。言葉のもつ力やはたす役割、守ることの意味とは? 言葉についての哲学絵本”。これは大人が読みたくなるやつだ……。ユネスコ「先住民言語の国際の10年」(2022-2032年)の公式選定絵本とのこと。
光文社
組織不正はいつも正しい
9784334103224
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784334103224
新書。“組織不正は、いつでも、どこでも、どの組織でも、誰にでも起こりうる。なぜなら、組織不正とは、その組織においていつも「正しい」という判断において行われるものだからだ”。本書は会社組織についてのもののようですが、きっと政治とか他分野にも応用可能ですよね。大事な1冊かも。
光文社
ナショナリズムと政治意識
9784334103231
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784334103231
新書。“グローバル化がますます深化拡大するなか、世界の政治は外国人排斥や反グローバリズム、そして時には戦争という、しばしば「ナショナリズム」と結び付けられる現象に彩られている。このような動きに対して「保守化」「右傾化」といった表現がされることがあるが、それは適切なのか”。たとえ現政権を批判する文脈でも外国にルーツを持つ者やアイヌ・琉球民族などを蔑ろにする言説を振り翳すことは「左派」にもあるので、この本も大事な1冊かもしれませんね。
講談社
マイスモールランド
9784065356913
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784065356913
文庫。“幼いころから日本で育ち、埼玉の高校に通うクルド人の少女サーリャは、バイト先で東京の高校生・聡太と出会う。県境を流れる荒川の岸辺で、少しずつ心を通わせていく二人。しかしある日突然、在留資格を失ったサーリャの家族は、就労を禁じられ、自由に移動することもできなくなる……。現代社会の不条理を、居場所を求めて闘う一人の少女の視点で描き、ベルリン映画祭で高く評価された映画『マイスモールランド』(2022年5月6日公開・嵐莉菜、奥平大兼出演)を監督自ら小説化した注目作”。これに関しては「いま」文庫化する必要がある本だと思いますね。
講談社
呪文よ世界を覆せ 1巻
9784065350812
https://comic-days.com/episode/14079602755592959460
“相方だけがブレイクした売れないお笑い芸人・虎屋戸太郎は、彼女と住処をいっぺんに失ったどん底の日に、人懐っこく話しかけてくる不思議な女性・多悠多に出会う。彼女と、彼女が愛してやまない「短歌」に触れたとき、戸太郎の運命は変わり始める”。出てくる短歌は実在のものなので、ブックガイド的なものにもなってます。
文藝春秋
ロシア文学の教室
9784166614578
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784166614578
新書。奈倉有里。なんだけど、中身は小説。文春新書の形をした新書っぽいタイトルの小説。でも中身は新書みたいにロシア文学の勉強ができる代物。説明が複雑。読んで理解すべし……。
新潮社
メディアはなぜ左傾化するのか
9784106110443
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784106110443
新書。元・産経新聞の有名記者の本が新潮新書で出るというなかなかに地獄な1冊ですが、新潮社はずっと前からそんなもんです。というか大手出版社はみんななんらかのクソな本を出しています。ということで、特に大騒ぎせずに無視するのがベターな本かと。変に騒ぐと「キャンセルカルチャーだ」的な揚げ足取りされるだけなので。
今週のお知らせコーナー
①定期読書会関連のお知らせ
・5/4(土)14時〜16時 高橋くん読書会 *今回は土曜日開催です
→今回の課題本、もといテーマは「掃除に関する本」とのこと。実用書ど真ん中から物語内の描写まで。ようはなんでもあり。特に申し込みは不要です。自由参加。ツイキャスでも流します。zoom参加希望者はbooks.lighthouse@gmail.comまで連絡ください。
・5/26(日)14時〜16時 『物語とトラウマ』ゆる読書会
→今回の課題本は多和田葉子の『地球にちりばめられて』です。詳細はこちらから。
②〈新規イベント〉5月18日(土)19時〜21時、江古田の本屋・百年の二度寝さん主催でジュンク堂の福嶋聡さんと対談します。詳細はこちらから……なんですが、私がタイに行っている間に告知がなされ、さらにその間に満席になってしまっておりました。音声のみのアーカイブ販売はあるようなので、そちらをお待ちくださいませ。なお、この日は幕張のお店は終日おやすみ。日中は百年の二度寝店内にて出張・本屋lighthouseを開催します。私はいつもどおり二度寝をしてから二度寝に向かいます。よろしくお願いします。
③5月11日(土)に山内尚さんと清水えす子さんをお招きしてイベントを開催します。詳細とトークイベントの参加申込はこちらから(お茶会は自由参加です)。『ノンバイナリースタイルブック』『シミズくんとヤマウチくん われら非実在の恋人たち』の2冊のセット販売もしています。ご都合に合わせてぜひ。店頭受取も可能なので、ご希望の場合はウェブストアは通さず直接連絡ください。
④ウェブストアを移転しました。新ストアはこちらです。旧ストアは完全に停止しようと思っていたのですが、無料プランに切り替えても7月くらいまで有料のままなので、Tシャツ売場にしました(新ストアにはTシャツ作成機能がないので)が、こちらもTシャツ作成機能が終了したのでSUZURIに移行しました。
⑤ブルースカイのアカウントを開設していました。なお、Twitterの運用はほぼ終了しました。緊急連絡やDM利用などは続けます。あと、Twitterでしか告知ができない/していないアカウントに関わる告知なども、当面の間は続けます。通常のお知らせ系はほかSNSにて同時並行的におこないますので、ご都合よろしいものでチェックしてください。各種リンクはこちらにまとまっていますので、よーちぇけらー٩( ᐛ )و
⑥ニュースレターサイト「the letter」でも新刊チェック記事などの配信を始めました。このニュースレターサイト=substackは日本語対応していなくてですね、登録などでまごついてしまう方もいるだろうな……ということで同時配信(私もまごついている)。有料記事とweb灯台よりコンテンツは、当面substackのみで配信します。
⑦2024年5月より営業時間を変更します。土日祝日はこれまでどおり12時〜19時での営業ですが、平日の営業時間を14時〜21時に変更。いままでより2時間後ろにずらします。会社帰りにも寄りやすくなると思うので、ぜひ帰り道に……。
⑧5月19日(日)の文学フリマ東京に出店します。ブースは第一展示場Z-19。今回は日記本『Books(tore) witness you. vol.2』が新刊です。毎度おなじみ、そのひぐらし商会も一緒にいます。今回から入場料が1000円かかるのと、そもそもブースが多すぎてまわるのが大変。ということで5月25日(土)に後夜祭的な感じで、幕張のお店の前で出店イベントをやります。今回の出店者は十七時退勤社とごーすと書房。今後も定期的に開催予定なので、出店したい方がいたらbooks.lighthouse@gmail.comまで連絡ください。日程調整します。