新刊チェック(24/05/19-25)&お知らせ
定期的に担当している日刊SPA!での書評が配信されました。今回は『ふつうの軽音部』というコミック。SPA!のメイン読者層はきっと「ふつう」の人たちだと思うので、『ふつうの軽音部』は「ふつうの軽音部」の話だよね、ということを書きました。
4月の売上がうへぇ〜、でした。タイに1週間行ってたのもありますが、それを引いても平日の売上(というか来客数)が異常空間Z。ここからさらに食料品の値上げが続くようですし、本屋復権は政治状況の変化が最短ルートです。というわけで、立憲(あるいは泉)にはいろいろ言いたいことがありますが、先日の選挙で3勝したのはよかったと思います。
新刊チェック(24/05/19-25に刊行予定の本) *入荷は少し遅れます
みすず書房
ヒトラーを支持したドイツ国民 新装版
9784622097150
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784622097150
“ドイツの一般大衆は当時、ナチ恐怖支配についてどこまで知っていたのか。実際には、戦争の進展とともに強制収容所は次々と増設されて身近な存在になり、被収容者が公開処刑にされる様子まで日常的に見ていた。政府が「非社会的分子」や外国人労働者を排除することを、国民の多くは誇りとし、積極的に協力した。一方で、ヒトラーは「敵」には容赦ない強制手段をとりながら、国民を味方につけることには細心の注意を払った。情報操作を徹底し、事実を隠すよりは公開したのである。「強制」と「同意」は一貫して縺れ合っていた”。これいまの日本じゃん、と思うことばかりで嫌になりますが、どうにか抵抗していきましょう。7200円+税のこの本が気軽に買える社会を手に入れるんじゃ。
法政大学出版局
出版帝国の戦争
9784588603730
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784588603730
“帝国日本の出版市場は合法/非合法を問わず、植民地の人々を積極的に読者として包摂しようとした。朝鮮人にとって日本語は抑圧する言語であり、抵抗の思想を学ぶための言語であり、娯楽のための言語でもあった。『戦旗』や『キング』、マルクスやレーニン、金子文子や火野葦平、林芙美子らの思考や文学が、発禁本とともに帝国の支配圏でいかなる思想や文化を醸成したのか、多彩な作品から読み解く”。表現の自由や検閲・発禁への抵抗というものは、「下から上」に対して行使する権利の話であって、「マジョリティがマイノリティに向けて」行使するヘイトスピーチに対して適用する/されない云々の話ではないのだ、ということを認識してほしいですよね。本書は「上から下へ」の強権的な意図で刊行された本を、「下から上へ(の抵抗)」の意図によって奪い返していった者たちの話なのではないかと思います。これも読みたい。
みすず書房
核燃料サイクルという迷宮
9784622096979
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784622096979
“日本のエネルギー政策の恥部とも言うべき「核燃料サイクル」は、戦前の電力国家管理体制や冷戦期の核保有幻想などの水脈が合流して産み落とされた、まさに「核ナショナリズム」の申し子だった”。「核ナショナリズム」という概念があるのか……結局これも「面子」の話ということなのだろうか。面子で原発推進、面子で戦争、面子で……。
みすず書房
バレンボイム/サイード 音楽と社会 新装版
9784622097167
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784622097167
“かたやエルサレム生まれカイロ育ち、ニューヨークに住むパレスチナ人エドワード・サイード。かたやユダヤ人としてブエノスアイレスに生まれ、イスラエル国籍、ロンドン、パリ、シカゴ、そしてベルリンを中心に活躍する指揮者・ピアニスト、ダニエル・バレンボイム。つねに境界をまたいで移動しつづけている二人が、音楽と文学と社会を語り尽くした6章”。毎年恒例の「書物復権」の復刊でしょうか。やはりこれも高い……。貸本屋になりたい。
いそっぷ社
マンガで読むジェンダー入門
9784910962061
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784910962061
1テーマ1ページの簡潔な説明がたくさんある感じなんだけど、「ポストコロニアル・フェミニズム」「ジェンダーには複数の語り方がある」とかのページもあって、シンプルな造り以上に(だからこそ?)丁寧にテーマを選んでいる印象を受けます。翻訳物なので、翻訳の精度と言葉選びに期待です。
タバブックス
仕事文脈vol.24
9784907053697
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784907053697
半年ごとに刊行されている『仕事文脈』、今回の特集は「「反戦」と仕事」「住まい、どうですか?」の2本。くらし、仕事、社会、などなどを切り離さずに捉え、実践していくには。19日(日)の文フリ東京で初売りだと思われます。書店販売はその数日後から。予約受付中。
集英社
マチズモを削り取れ
9784087446500
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784087446500
文庫。武田砂鉄。文庫なので解説がついていて、金原ひとみが担当しています。ちょっと意外な組み合わせかも。
集英社
ミシンと金魚
9784087446456
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784087446456
文庫。単行本が当店ではロングセラーになりましたね。文庫化を機にぜひ……。“認知症を患うカケイは、「みっちゃん」たちから介護を受けて暮らしてきた。ある時、病院の帰りに「今までの人生をふり返って、しあわせでしたか?」と、みっちゃんの一人から尋ねられ、カケイは来し方を語り始める”。
集英社
水たまりで息をする
9784087446463
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784087446463
文庫。高瀬隼子。来月は集英社文庫がアツい……。
早川書房
関心領域
9784152103321
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784152103321
“おのれを「正常」だと信じ続ける強制収容所の司令官、司令官の妻と不倫する将校、死体処理班として生き延びるユダヤ人。おぞましい殺戮を前に露わになる人間の本質を、英国を代表する作家が皮肉とともに描いた傑作”。映画も同時期に公開。早く観たいし読みたい。
幻戯書房
枯草のクッションを敷いた古馬車 尾崎翠全集未収録作品ほか
9784864882996
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784864882996
“1998年の『定本尾崎翠全集』刊行以後、新たに発見された小説“小野町子もの”=「書簡集の一部分」をはじめとする書籍初収録作品の集大成。かつ『全集』解説の誤りを正す解題、最新版の年譜等も収録”。なんかすごいのきました。お値段も張りますが……。
文藝春秋
私の身体を生きる
9784163918488
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784163918488
“私の身体はほんとうに私のもの? 私の身体はどんな視線にさらされ、どのように規定され、内面化されているのか。17人の人気小説家・美術作家・コラムニスト・漫画家・発明家が自らの「身体」と向き合い、ときにユーモラスに、ときに激しく、そしてかつてない真摯さで文章をつむぐ”。もう少しシスジェンダー以外の書き手もいるといいなと思いますが、公表していないだけでいるのかもしれないし、断定はせずに中身に期待……。
晶文社
男はなぜ孤独死するのか
9784794974198
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784794974198
“自分の父親を自殺で亡くした経験を持ち、自殺問題についての第一人者が、豊富な臨床データと心理学のエビデンスに基づき、孤独死を避けるための具体的な処方箋を提示する実用書”。残念ながらマチズモに冒された者はこのような本は読まないので、まわりが読んで「傾向」を理解して導いてあげねばならないような気がします……結局ケア要員……でも大事な「実用書」じゃないかと思います。期待。
白水社
わからない
9784560092866
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784560092866
“名翻訳家/エッセイストが贈る、抱腹絶倒、奇想天外、虚実の境をまたぎ越すエッセイ集。単行本未収録、四半世紀分のキシモトワールド”ということで、岸本佐知子のエッセイ集です。白水社から出るのは久しぶりなのでは。予約受付中。
青弓社
ただ生きるアナキズム
9784787210593
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784787210593
“国家や資本主義が私たちの欲望をさまざまに制限する現代にあって、「ただ生きる」とはどういうことか。「ただ生きる」ために、私たちは何をすべきなのか”。森元斎の新刊です。みなさんもっとアナキズムの精神を内面化させましょう。ということで予約受付中。
以文社
ノット・ライク・ディス
9784753103843
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784753103843
“トランスジェンダーの身体経験の分析を通し、そのトランスの身体を(シスジェンダーに対して)「特殊な」身体、「特殊な」経験とみなすのでなく、かつ、そのトランスジェンダーに対する既存の病理学的な認識図式を批判し、「トランスにとっての身体とは何か」のみならず、誰もが生きているこの「私の身体」とは何かを問いかける”。著者は『〈トラブル〉としてのフェミニズム――「とり乱させない抑圧」に抗して』の藤高和輝。
今週のお知らせコーナー
①定期読書会関連のお知らせ
・5/4(土)14時〜16時 高橋くん読書会 *今回は土曜日開催です
→今回の課題本、もといテーマは「掃除に関する本」とのこと。実用書ど真ん中から物語内の描写まで。ようはなんでもあり。特に申し込みは不要です。自由参加。ツイキャスでも流します。zoom参加希望者はbooks.lighthouse@gmail.comまで連絡ください。
・5/26(日)14時〜16時 『物語とトラウマ』ゆる読書会
→今回の課題本は多和田葉子の『地球にちりばめられて』です。詳細はこちらから。
②〈新規イベント〉5月18日(土)19時〜21時、江古田の本屋・百年の二度寝さん主催でジュンク堂の福嶋聡さんと対談します。詳細はこちらから……なんですが、私がタイに行っている間に告知がなされ、さらにその間に満席になってしまっておりました。音声のみのアーカイブ販売はあるようなので、そちらをお待ちくださいませ。なお、この日は幕張のお店は終日おやすみ。日中は百年の二度寝店内にて出張・本屋lighthouseを開催します。私はいつもどおり二度寝をしてから二度寝に向かいます。よろしくお願いします。
③5月11日(土)に山内尚さんと清水えす子さんをお招きしてイベントを開催します。詳細とトークイベントの参加申込はこちらから(お茶会は自由参加です)。『ノンバイナリースタイルブック』『シミズくんとヤマウチくん われら非実在の恋人たち』の2冊のセット販売もしています。ご都合に合わせてぜひ。店頭受取も可能なので、ご希望の場合はウェブストアは通さず直接連絡ください。
④ウェブストアを移転しました。新ストアはこちらです。旧ストアは完全に停止しようと思っていたのですが、無料プランに切り替えても7月くらいまで有料のままなので、Tシャツ売場にしました(新ストアにはTシャツ作成機能がないので)が、こちらもTシャツ作成機能が終了したのでSUZURIに移行しました。
⑤ブルースカイのアカウントを開設していました。なお、Twitterの運用はほぼ終了しました。緊急連絡やDM利用などは続けます。あと、Twitterでしか告知ができない/していないアカウントに関わる告知なども、当面の間は続けます。通常のお知らせ系はほかSNSにて同時並行的におこないますので、ご都合よろしいものでチェックしてください。各種リンクはこちらにまとまっていますので、よーちぇけらー٩( ᐛ )و
⑥ニュースレターサイト「the letter」でも新刊チェック記事などの配信を始めました。このニュースレターサイト=substackは日本語対応していなくてですね、登録などでまごついてしまう方もいるだろうな……ということで同時配信(私もまごついている)。有料記事とweb灯台よりコンテンツは、当面substackのみで配信します。
⑦2024年5月より営業時間を変更します。土日祝日はこれまでどおり12時〜19時での営業ですが、平日の営業時間を14時〜21時に変更。いままでより2時間後ろにずらします。会社帰りにも寄りやすくなると思うので、ぜひ帰り道に……。
⑧5月19日(日)の文学フリマ東京に出店します。ブースは第一展示場Z-19。今回は日記本『Books(tore) witness you. vol.2』が新刊です。毎度おなじみ、そのひぐらし商会も一緒にいます。今回から入場料が1000円かかるのと、そもそもブースが多すぎてまわるのが大変。ということで5月25日(土)に後夜祭的な感じで、幕張のお店の前で出店イベントをやります。12時〜18時くらいで開催。今回の出店者は十七時退勤社とごーすと書房。今後も定期的に開催予定なので、出店したい方がいたらbooks.lighthouse@gmail.comまで連絡ください。日程調整します。