新刊チェック(25/08/03-09)&お知らせ
7日に親知らずを抜いて、14日に抜糸でした。実は13日の夜に足首がとんでもなく浮腫んでいることに気がついて、ここ15年ほどほとんど変わらなかった体重も3キロ増えていて、ここ数日の激しい頭痛含めて痛み止めや抗生剤の副作用なのではないか、もしくは別の異常……?と怖くなり抜糸ついでに採血と採尿をしてもらいました。結果は異常なし。でも明らかになにかがおかしくなっている。この不安はいったいどうすれば?
結果として、火曜日水曜日と徐々に体調は回復傾向になり、いまはだいぶ元気です(まだタネが残っている感覚があるけど)。おそらく薬の副作用+抜歯後の痛みで動けないことによる代謝の変化(ふだんはランニングなどをしている)+台風接近による気圧変化、などなどが超絶合体しての極悪体調不良だったのだと推測していますが、この「診断」を自力でしなくてはならなかったことが、苦しかったりします。
というのも、20歳を過ぎて急に毎日体調不良になり、いくつかの病院で各種検査をして今回同様に「異常なし」とされ、その際に医者から「気のせいじゃない?」みたいな態度をとられたことを思い出してしまうからです(今回担当してくれた研修医さんはいっしょに困ってくれたのでありがたかったけども、それでも思い出してしまう)。1年かけて辿り着いたのは「遅延型アレルギー」というもので、原因物質を摂らないようにしたら急激に回復しました。でもこのアレルギー、リンク先にあるように「医学的な評価が定まっていない」ため、医者によっては「気のせいでしょ」的な対応や発言をすることもあります。(その点、リンク先は有用性も認めつつ慎重な利用をしていくという指針が表明されているので、個人的には高評価です)
こういうのは本当に傷つくし、「医学的な評価が定まっていない」というときの「医学」あるいは「科学」はあくまでも「西洋(医学)」を基準にしたものでしかなく、その基準や手法で測ったり検知したりできないものごとがあるということを、忘れているのだと思います。そのうえ、そういった検知不可能=評価不可能なものごとを劣った存在として見たりすることもあり、そのような視線を受けながら過ごしてきた者がなにに希望を見出すか、考えてみる必要があります。(西洋中心のものの見方についての批判は、たとえば中村達『私が諸島である カリブ海思想入門』『君たちの記念碑はどこにある? カリブ海の〈記憶の詩学〉』がここ最近のおすすめです)
いま参政党を支持している人がどういった過程を経て支持に至ったのか、その入り口はどこだったのか、ということを考えることの重要性が、ここで繋がってきます。体調不良を気のせいと一蹴され(たように感じてしまい)、どうにかして自力で辿り着いた治療法、たとえばヨガ、食品添加物や小麦の除去といった「希望」を、正しいと肯定してくれるのがその人にとっては参政党しかなかった、そんな場合もあるでしょう。実際、参政党の指導者たちがそれらをちゃんと「支持者」ひいては民衆に対して適切に活用するつもりはないのでしょうし、その「希望」は紛い物でしかないのだと思います。ですが、それが紛い物であると説明し説得を試みる際に、自分の苦しみが適切に手当てされなかった経験が無視されてしまうのであれば、心変わりの可能性は限りなく低くなるはずです。このような「入り口」から参政党支持になり、その結果として排外主義にも賛同してしまっている人がいるのなら、差別をやめろと言ったところで変わらないかもしれません。つまり、その人の根底にある、最も変えてもらうべき意識は「参政党以外にも自分の傷を手当てしてくれる他者がいる」という事実を知ることなのかもしれません。
20日の選挙には間に合わないかもしれないけど、こういうアプローチもやっていきたいと思います。希望のタネはどんどん蒔いたほうがいいので。とはいえSNSではやりにくい手法なので、身近な相手向けだとは思いますが。
新刊チェック(25/08/03-09に刊行予定の本) *入荷は少し遅れます
黒鳥社
文学カウンセリング入門
9784910801032
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784910801032
“韓国相談大学院大学での詩人チン・ウニョンとギム・ギョンヒの講義や論文などをもとに構成された本書は、理論編(第1部、第2部)では、文学の癒しの力とその背景にある哲学・教育思想を豊富に紹介。実践編(第3部)では、シンボルスカ、メアリー・オリヴァーらの詩を用いた実践的な12のレッスンを通して、読む・書くことで自己理解と癒しを深める手法を紹介しています”。“書き写しやリライトを通じて、自らの気持ちに寄り添い、誰かと分かち合う力を育てるカリキュラム”とあるように、エッセイではなく実用書要素が強い1冊のもよう。みなさん『家庭の医学』の隣に置きましょう。(「家庭の」という枕詞に家族制度を前提とする価値観が見出されますね……)
作品社
アナーキーのこと
9784867930892
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784867930892
“暴力や無秩序と結びつけられがちなアナーキー/アナキズム。本書では、無神論者で兵役拒否者の父親と、大学でアナキズムを講じる政治学者の息子との対話をとおして、その一面的理解をほぐしつつ、「調和による秩序」を求めるその核心を明らかにし、現在の社会問題へと接続する”。父が子に教える系の本はよくあるしなんか腹立つけど、子が父に教える(あるいは対等に対話する)系は珍しいのでその点でも期待。
集英社
相談するってむずかしい
9784087881202
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784087881202
“発達障害による困りごとや、生きづらさを語り合う場を主宰する細川貂々と心身の不調をきっかけに、目的を持たない対話の場を作った青山ゆみこ。オープンダイアローグや当事者研究など、話す/聞く場の実践を通して、「相談する」ことの大切さに気づいたふたりがつづる、話して、聞いた日々のこと”。相談していい、と思えるまでに時間もかかりますしね。じっくり取り組んでいくことの重要性……。
作品社
呪文の言語学
9784867931042
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784867931042
“ルーマニアには古い魔女文化がいまも残っているとされている――。東欧在住20年の言語学者が、魔女大国とも呼ばれるこの地の民間伝承や実体験をひもとき、“呪文の正体”に迫る”。呪文とか魔女といったものもまた「西洋」基準の「科学」において下位概念として認識されがちなものですよね。あと、魔女狩りの歴史を見ていくと排外主義の結末として捉えることも可能なのと同時に、宗教的なものを「危険視」つまり「排除」することの危険性も考えなくてはならないことが見えてきます。宗教=危険、あるいは劣ったものとみなすこと。これもまた排外主義の在り方です。(というようなことを考えると、本書の立ち位置も批判的に見ながら読む必要がある気もします。版元の紹介文がよろしくないだけかもしれませんが)
小学館
〆切は破り方が9割
9784093898140
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784093898140
“著書『ひとりでしにたい』がドラマ化! いま大注目の漫画家が贈る、〆切と編集者からの催促をサバイブする病みつき必至・抱腹絶倒の傑作エッセイ集”。カレー沢薫。タイトルだけで小一時間は楽しめる。
東洋経済新報社
サイコパスから見た世界
9784492224304
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784492224304
〈ニューロダイバージェントへの差別言説あり・リンク先注意〉
SNSで批判して炎上させたいわけではないのですが、この新刊チェックを読んでくれている同業者はそこそこいるようなので注意喚起というか、こういう本の仕入れ実績を出版社に持たせちゃダメなので、載せておきます。本書はちょっと前に問題になった「職場の困った人」的なあの書籍と同じ過ちを繰り返しています。そもそも他者をサイコパスと断定すること自体が危険だし差別的。もちろん他者批判の文脈で使うべき言葉でもない。
偕成社
ポケットたくさんワンピース
9784033286907
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784033286907
“ルーシーのたんじょうびに、おばさんが新しいワンピースを買ってくれることになりました。お店には、ありとあらゆるワンピースがそろっています。きらきらワンピース、ふりふりワンピース、おしゃれなワンピースに、おちゃめなワンピース、ようせいになれるワンピースに、ようかいになれるワンピースまで! でも、ルーシーはどれもピンときません。ルーシーが欲しいのは、道で拾った宝物をなんでもしまえる、ポケットがたくさんついた服なのです”。そうだ!服にはポケットをたくさんつけろ!本書を読んで大人になった子どもたちが自然と服にポケットがついていることを要求する/ポケット付きの服をデザインするようになることを願って、本屋はこの本をお店に置くのである!いや、いますぐつけてくれ!
英治出版
つくるをほぐす
9784862763624
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784862763624
副題「完成を目指さないものづくりで学びとアイデアを生み出す「造形対話」」。温泉マーク、そして人々レーベル未完成コンピ案件です(半分私信)。
今週のお知らせコーナー
①定期読書会&イベント関連のお知らせ
・8月10日(日)14時〜16時 高橋くん読書会 *今回は土曜日開催です
→今回の課題テーマは「読書感想文(を書くための読書会)」です。特に申し込みは不要です。自由参加。ツイキャスでも流します。zoom参加希望者はbooks.lighthouse@gmail.comまで連絡ください。
・『物語とトラウマ』ゆる読書会はいったん終了。一度別のワークショップ的なものを挟んでから、別のテーマで読書会をスタート予定です。
・7月26日(土)14時〜16時 Blakeさん主催のおしゃべりイベント「食べるを駄弁(だべ)る」
→こちらはだいたい2ヶ月に1回の開催です。参加費500円。当日現金払い。詳細はこちらから。
・7月18日(金)18時から マリーンズの試合を奥の部屋で観る会
→自由参加です。飲食物の持ち込みも歓迎。ただただ野球を観るだけ。
②〈特別イベント関連〉
・〈店内イベント〉7月20日(日)17時〜19時 大原扁理さん読書会(課題本:『シン・ファイヤー』)を開催します。著者登場、というか主催の特別な読書会です。詳細&申込はこちら。
・〈店内イベント〉7月21日(月・祝)12時〜15時 スナック社会科vol.12「早尾貴紀対談集『いつの日かガザが私たちを打ち負かすだろう』刊行記念 早尾さんと小田切さんにもっと嫌な話を聴く」を開催します。先日開催したvol.11の続編的な感じで、早速やります。店頭&配信。アーカイブもあります。詳細と申込はこちら。vol.11のアーカイブもあるので予習的にぜひ。
・〈店内イベント〉7月23日(水)クレオパトラブックス選書祭@本屋lighthouseを開催します。名古屋はTOUTEN BOOKSTOREから始まり、さらには都内でも人気の対面型選書でございます。なかなかない機会なのでぜひ……。詳細と申込はこちら。
・〈店内イベント〉7月27日(日)13時〜15時 『アナキズム 新たな社会関係を創り出す』(白水社)刊行記念イベント「本屋から始めるアナキズム」を開催します。登壇者は訳者・小田透さん、高島鈴さん、北村紗衣さんです。詳細と申し込みはこちら。店内参加がすでに満席・キャンセル待ちとなっていますが、配信は無制限で参加可能です。
・〈店内イベント〉8月3日(日)12時〜19時 幕張リトルブックマルシェ
→定期開催を目論む、ごーすと書房さんと共催のブックフェス的なサムシングです。今回は柿内正午さん(零貨店アカミミ)がゲスト出店。そして柿内さんと一緒に「本屋をじっくり見る会(スロー・ルッキングを実践する会)」も開催します。詳細は確定次第、告知ページに追記します。本の購入以外は無料参加のイベントなので、気軽にご参加ください。詳細はこちらから。
③読書のSNS&記録アプリ「Reads」のアカウントも取得、運用しています。個人的に読んでいる本を中心に紹介、ただただ楽しくやっております。ウェブストアでは「最近Readsで紹介した本」カテゴリも作りました。現状iOSのみですが、Androidにも対応予定とのこと。見るだけならウェブブラウザでもできるので、ぜひチェックしてみてください→本屋lighthouseのページ
④ウェブストアを移転しました。新ストアはこちらです。旧ストアは完全に停止しています。TシャツなどのグッズはSUZURIで販売中です。
⑤ブルースカイのアカウントを開設していました。mixi2も。なお、Twitterの運用はほぼ終了しました。緊急連絡やDM利用などは続けます。あと、Twitterでしか告知ができない/していないアカウントに関わる告知なども、当面の間は続けます。通常のお知らせ系はほかSNSにて同時並行的におこないますので、ご都合よろしいものでチェックしてください。各種リンクはこちらにまとまっていますので、よーちぇけらー٩( ᐛ )و
⑥2024年5月より営業時間を変更しました。土日祝日はこれまでどおり12時〜19時での営業ですが、平日の営業時間を14時〜21時に変更。いままでより2時間後ろにずらします。会社帰りにも寄りやすくなると思うので、ぜひ帰り道に……。